
こんにちは!所沢いそのクリニック院長の磯野 誠です。
「夜中に何度もトイレで目が覚めてしまう」
――そんな夜間頻尿は、泌尿器科でもっとも相談の多い症状のひとつです。
本記事では、夜間頻尿の定義・4つの原因・ご自宅でできる対策まで、できるだけわかりやすく解説します。
お薬や手術の前に取り組める対策もありますので、ぜひ最後までお読みください。
夜間頻尿の定義 何回からが「夜間頻尿」?

夜間頻尿とは、文字通り夜間に排尿のために1回以上起きてしまう状態を指します。
日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会のガイドラインでも、「夜間に排尿のために1回以上起きなければならない」状態と定義されています。
ただ、実際にお困りになるのは2回以上のことが多いのが実情です。
お酒を飲んだ日などに夜1回トイレに起きることは健康な方でもよくあります。
一方で、夜2回以上トイレで目が覚める方は、それ以下の方に比べて生活の質(QOL)が明らかに低下するという報告もあります。
「最近、夜のトイレが増えてつらい」と感じる回数が、相談の目安と考えてよいでしょう。
夜間頻尿で困ること・放置のリスク

夜間頻尿は単に睡眠を妨げるだけでなく、健康全体に影響します。
ご高齢の方:転倒・骨折のリスク
夜中にトイレへ向かう途中で転倒し、骨折してしまうケースは少なくありません。
加齢とともに骨はもろくなるため、転倒による骨折が寝たきりにつながり、免疫力の低下や肺炎などを通じて死亡率の上昇に関与することが指摘されています。
若い方:睡眠不足による生活の質の低下
夜に何度も目が覚めると慢性的な睡眠不足になり、日中の集中力が落ちて仕事や家事の効率(生産性)が下がってしまいます。
年齢を問わず、夜間頻尿は侮れない症状です。
夜間頻尿の4つの原因

夜間頻尿の原因は、大きく次の4つに分けられます。
原因によって対策が異なるため、まず「自分はどのタイプか」を知ることが大切です。
| 原因 | 内容 | 主な要因の例 |
|---|---|---|
| ① 多尿 | 1日(24時間)の尿量そのものが多い状態。目安は体重1kgあたり40mL超。例:体重60kgなら1日2,400mL(2.4L)超。 | 水分のとりすぎ、糖尿病、利尿薬 など |
| ② 夜間多尿 | 1日の尿量のうち、夜間(就寝中)の尿量の割合が多い状態。 目安:65歳未満は20%超、65歳以上は33%超。 |
就寝前の水分過多、足のむくみ、抗利尿ホルモンの低下、高血圧・心不全 など |
| ③ 膀胱蓄尿障害 | 膀胱に尿を十分にためられず、少量で尿意をもよおす状態。 | 前立腺肥大症、過活動膀胱、膀胱周囲の器質的な異常 など |
| ④ 睡眠障害 | 尿意で目が覚めるのか、眠りが浅くて目覚めたついでにトイレに行くのか区別が難しいタイプ。 | 不眠、睡眠時無呼吸症候群 など |
夜間多尿が起こる主な仕組み
夜間頻尿でもっとも多い「夜間多尿」には、次のような背景があります。
- 就寝前の水分のとりすぎ:「血液をサラサラにしたい」「脱水で脳の血管が詰まるのが心配」といった理由で水分を多くとると、その分だけ尿量が増えます。これは体としては正常な反応です。
- 足のむくみ(水分の移動):加齢で足の筋肉が弱ると、日中は重力で下半身に水分がたまりがちです。夜横になると、その水分が一気に心臓側へ戻り、尿量が増えます。
- 抗利尿ホルモンの低下:本来は夜間の尿を作りにくくするホルモン(抗利尿ホルモン)の働きが、加齢とともに弱まり、夜間も尿が多く作られるようになります。
自分でできる夜間頻尿の対策

「夜間頻尿は自力で全部治せる」という情報も見かけますが、ご自身でできることとできないことがあります。できる対策はご自宅で取り組み、難しい部分は私たち泌尿器科がお手伝いします。まずは以下の対策から始めてみてください。
1. 水分のとり方を見直す
水を多くとれば尿量が増えるのは当然です。明確な基準は難しいものの、就寝の約2時間前からは、のどが渇かなければ水分を控えていただいてよいでしょう。とくにカフェインやアルコールは尿量を増やします。アルコールは「尿量が増える」だけでなく「前立腺がむくんで尿が出にくくなる」という二重の意味で夜間頻尿には不利です。
2. 排尿日誌をつける
どれだけ水分を控えればよいか迷うときに役立つのが排尿日誌です。連続2日間(できれば3日間=48〜72時間)、何時に何mL排尿したか、食事や飲み物でどれだけ水分をとったかを記録します。客観的に状態を把握でき、原因の見極めにとても役立ちます。
3. 塩分を控える
塩分をとるとのどが渇き、水分摂取が増えて尿量も増えます。ガイドライン上の目標は1日6g未満です。カップ麺の汁まで飲み干すとそれだけで6gに達してしまうこともあり、達成はやさしくありませんが、意識するだけでも違います。
4. 運動・足の筋肉づくり
激しい運動は不要です。夕方のお散歩や、足の筋肉を鍛えるスクワットなどで、足にたまる水分を減らすことが夜間の尿量を抑えるのに役立ちます。
5. 夕方に「足上げ」をする
夕方(15〜16時ごろ)に15分ほど横になり、足を軽く上げてみてください。足にたまった水分が体に戻り、就寝前に意図的に尿を出しておくことで、夜間の尿量を減らせる場合があります。
6. お薬の見直しを相談する
ご高齢の方は複数のお薬を飲んでいることが多く、なかには夜間の尿量を増やすものもあります。一部の降圧薬や、むくみ・心臓の病気で処方される利尿薬がその例です。気になる場合は、自己判断で中止せず、処方医や泌尿器科に「夜間多尿の原因になりうる薬を別の薬に変更できないか」を相談してみましょう。
- 就寝2時間前からは、のどが渇かなければ水分を控える
- 夜間のカフェイン・アルコールを控える
- 排尿日誌を2〜3日つけて状態を把握する
- 塩分は1日6g未満を目標にする
- 夕方の散歩・スクワット・足上げを取り入れる
- 飲んでいる薬を医師と一緒に見直す
よくある質問(FAQ)

Q. 夜間頻尿とは何回からですか?
医学的な定義では、夜間に排尿のために1回以上起きる状態を夜間頻尿といいます。ただし生活に支障が出てお困りになるのは2回以上のことが多く、夜2回以上起きる方は生活の質が低下しやすいと報告されています。
Q. 夜間頻尿は自分で治せますか?
すべてをご自身だけで治すのは難しいものの、水分・塩分のとり方の調整、夕方の運動や足上げ、お薬の見直しなど、ご自宅でできる対策で改善が期待できる場合があります。原因によって対処法が異なるため、改善しなければ泌尿器科にご相談ください。
Q. 病院に行く目安はありますか?
夜2回以上トイレで目が覚めて睡眠や日中の生活に支障が出ている場合や、対策をしても改善しない場合は受診をおすすめします。とくにご高齢の方は転倒・骨折のリスクがあるため、早めのご相談が大切です。
Q. 寝る前の水分はどのくらい控えればよいですか?
一律の基準はありませんが、就寝の約2時間前からは、のどが渇かなければ控えていただいてよいでしょう。脱水や持病のある方は自己判断せず医師にご相談ください。

