
こんにちは!所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。
いきなりですが、健康診断の結果票、引き出しにしまったままになっていませんか。
C判定やD判定を見て「大げさでしょ」「どうせ一時的なもの」と思った方も多いかもしれません。
しかし泌尿器科専門医として日々患者さんを診ていると、症状が出てから来院した方ほど、選べる治療の選択肢が少なくなっているという現実があります。
実は、健診で異常を指摘された方の半数以上が医療機関を受診していないというデータがあります。
「症状がないから」
「仕事が忙しくて」
「何か言われるのが怖くて」……
その気持ちはよく理解できます。ただ、泌尿器や腎臓の病気は、自覚症状が出る前の段階でしか届かないSOSが健診結果票に書かれていることがあるのです。
本記事では、健診結果票の泌尿器に関わる5つの項目を、判定記号の意味から受診のタイミング・受診先までわかりやすく解説します。
健診結果の判定記号(A〜E)の正確な意味

まず、結果票に記載されているアルファベット記号の正確な意味を整理しましょう。意外ときちんと把握していない方が多い部分です。
| 判定 | 意味 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| A | 異常なし | 安心してOK。来年も受診を |
| B | 軽度の異常(日常生活に支障なし) | 次回健診で引き続き確認 |
| C | 要経過観察(病気と断定はできないが放置はNG) | 医療機関への相談を検討。2年以上続く場合は必ず受診 |
| D | 要精密検査・要治療 | 早めに医療機関を受診 |
| E | 緊急性が高い状態 | 今すぐ受診が必要 |
健診の結果票は、体からあなたへの年に一度の手紙です。
AやBなら「今年も元気でよかった」という便り。
CやDは「一度診てもらってね」というSOSです。
この手紙を読まずにしまいこむことが、命に関わる見逃しにつながる可能性があります。
健診に含まれる泌尿器関連の5項目

ほぼすべての健診に含まれているのが尿検査です。
尿タンパク・尿潜血・尿糖の3項目が基本セットで、1本の採尿で同時に調べることができます。
男性の方(40〜50歳以降)は、市区町村のがん検診や人間ドックにPSA(前立腺特異抗原)が含まれている場合があります。
会社の定期健診では対象外のことが多いため、一度ご確認ください。
また、血液検査の中にクレアチニン・eGFR(腎機能の指標)が含まれていることもあります。
以下ではこの5項目を順番に解説します。
尿蛋白

なぜ尿にタンパクが出るのか
腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。
正常な腎臓はタンパク質を血液側に残しながら、不要なものだけを尿として流します。
ところが腎臓のフィルター(糸球体)に傷がついて穴が開くと、本来残るべきタンパク質まで尿に漏れ出してしまいます。
これが「尿蛋白陽性」という状態です。
判定別の対応
疑われる病気
継続して尿タンパクが続く場合に疑われる病気には、慢性腎臓病・糖尿病性腎症・ネフローゼ症候群などがあります。いずれも初期にはほとんど自覚症状がないのが特徴です。
尿潜血・血尿

「見た目は普通の尿」でも血が混じっていることがある
「血尿」と聞くと赤い尿をイメージする方が多いですが、健診で引っかかる血尿の多くは目で見ても普通の尿の色をしています。
これを顕微鏡的血尿といい、見た目は透明なのに血が混じっている状態です。
これが尿潜血の最も怖いところです。
判定別の対応
なぜここまで重要なのか
尿潜血が続く場合に疑われる病気の中に、膀胱がんや腎がんが含まれているからです。
膀胱がんは尿潜血が唯一の初期サインであることが非常に多い病気です。
しかも初期には痛みもなく、何も感じません。
💡 「一回引っかかったけど次の健診では陰性だったから安心した」という方へ
一度でも陽性が出た方は、次回の健診で陰性になっていても念のため泌尿器科での精密検査を強くおすすめします。
尿糖

「尿糖=糖尿病」とは限らない
「尿に糖が出た=糖尿病」と思っている方が非常に多いですが、実はそう単純ではありません。
血糖値がある一定のレベルを超えると腎臓から糖が尿に漏れ出ますが、血糖値が正常なのに尿糖が陽性になる「腎性尿糖」という体質の方もいます。
腎臓が糖をキープする閾値がもともと低い体質によるもので、病気ではありません。
判定別の対応
PSA(前立腺特異抗原)

PSAとは何か
PSAは前立腺から分泌されるタンパク質で、前立腺がんや前立腺肥大症があると数値が上昇します。一般的な基準値は4.0 ng/mL未満とされていますが、年齢によって目安が異なります。
| 年代 | PSA の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 40代 | 2.0〜2.5 ng/mL 以下 | 経過観察 |
| 50〜64歳 | 3.0 ng/mL 以下 | 経過観察 |
| 65〜69歳 | 3.5 ng/mL 以下 | 経過観察 |
| 70歳以上 | 4.0 ng/mL 以下 | 経過観察 |
グレーゾーン(4.0〜10.0 ng/mL)について
4.0〜10.0 ng/mLは「グレーゾーン」と呼ばれ、前立腺がんの可能性が約25%ある範囲です。C〜D判定に相当し、泌尿器科での精密検査をおすすめします。10.0 ng/mL超はD判定相当で速やかな受診が必要です。
前立腺炎や前立腺肥大症でも数値は上昇します。しかし、前立腺がんは早期に発見できれば治療成績が非常に良いがんです。PSAの採血は数秒で終わります。その一歩が命を守ることに直結します。
📌 検診の対象年齢は50歳以上が目安ですが、ご家族に前立腺がんの方がいる場合は40代からの検討をおすすめします。
クレアチニン・eGFR(腎機能)

eGFRとは
eGFR(推算糸球体ろ過量)は「腎臓がどれだけ老廃物をろ過できているか」を示す指標で、腎臓の残り体力を表す数値です。
数値が高いほど腎臓の機能が保たれています。
クレアチニンは筋肉から出る老廃物の一種で、腎臓が正常に機能していれば尿として排出されます(参考値:男性0.65〜1.07 mg/dL、女性0.46〜0.79 mg/dL)。
eGFR 判定の目安
| eGFR 値 | 状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 60以上 | 正常〜軽度低下 | 様子見でよい場合がほとんど |
| 45〜59 | 軽度〜中等度の低下 | 半年に一度の血液検査を |
| 30〜44 | 中等度〜高度の低下 | 腎臓内科または泌尿器科への受診を |
| 15〜29 | 高度な低下 | 透析に備えた準備を始める段階 |
| 15未満 | 腎不全 | 透析や腎移植が検討される段階 |
慢性的な機能低下は、機能が半分以下に落ちてもむくみや倦怠感などの症状がほとんど出ません。
そして慢性的に低下した腎臓の機能は元には戻りません。
だからこそ、症状がなくても必ず受診してほしいのです。
📊 毎年の健診でeGFRが少しずつ下がっている方は、今すぐ昨年の結果票と見比べてみてください。
腎機能低下の原因として多いのは高血圧・糖尿病・過度な塩分摂取です。
「血圧も引っかかっている」という方は、腎臓への影響が同時に起きている可能性があります。
判定別・受診先の見分け方まとめ

「どこへ受診すればいいかわからない」という理由で先延ばしになっている方がとても多いです。ここだけでも覚えておいてください。
受診前に知っておきたいこと
受診の際は健診結果票をそのまま持参してください。
過去数年分があればなおよしです。医師はより正確に傾向を判断できます。
また、±が1項目だけで他がすべて正常であれば、次回健診まで様子見でよいケースもありますが、同じ項目が2年以上続けて陽性の場合は必ず受診してください。
「異常かどうかわからない」という段階でも、「ここが気になりました」という一言だけで大丈夫です。
専門医と一緒に結果票を読み解くことで、次にすべき行動が明確になります。
よくあるご質問(FAQ)
A. C判定(要経過観察)は病気と断定できないものの、放置は禁物です。
特に尿潜血・尿タンパクのC判定が2年以上続く場合は必ず受診してください。
D判定(要精密検査)はできるだけ早めの受診が必要です。
膀胱がんは尿潜血が唯一の初期サインであることが多く、初期段階では痛みなどの自覚症状がないためです。
A. PSAが高くても必ずしも前立腺がんではありません。
4.0〜10.0 ng/mLのグレーゾーンでは前立腺がんの可能性は約25%であり、前立腺炎や前立腺肥大症でも数値は上昇します。
ただし精密検査は必要な値であるため、泌尿器科を受診してください。
A. 必ずしも糖尿病とは限りません。
血糖値が正常でも尿糖が出る「腎性尿糖」という体質の方もいます。
ただし自己判断は禁物で、内科または糖尿病内科を受診して血糖値の精密検査を受けることが大切です。
まとめ

今日お伝えしたポイントを最後に整理します。
症状がなくても放置は禁物です。特にD判定は早めの受診を。
② 尿潜血は5項目中、最も放置してはいけない項目
膀胱がん・腎がんの初期サインである可能性があります。一度陽性が出たら必ず精密検査を。
③ 受診先に迷ったらまず泌尿器科へ
健診結果票を持参するだけで、次の行動が明確になります。
今年の健診結果が手元にある方は、この記事でお伝えした基準と照らし合わせて、ぜひ見直してみてください。「異常かどうかわからない」という段階でも、所沢いそのクリニックにお気軽にご相談ください。


