
こんにちは!所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。
「夜中に何度もトイレに起きてしまう」
「朝目が覚めても全然疲れが取れない」
——そんなお悩みを抱えていませんか?
実は、夜間に3回以上トイレに起きる方は、起きない方と比べて死亡率が約2倍になるというデータが報告されています。夜間頻尿は「年のせいだから仕方ない」と放置されがちですが、体からの大切なサインである可能性があります。
この記事では、夜間頻尿の症状・原因・受診すべきタイミング、そして自宅でできる簡単なセルフチェックの方法を、泌尿器科専門医の立場からわかりやすく解説します。
夜間頻尿とは?何回から「異常」なのか

医学的には、夜間に1回以上トイレに起きる状態を「夜間頻尿」と定義します。
ただし、1回程度であれば生活に大きな支障が出ないケースも少なくありません。臨床的に問題となりやすいのは、夜間2回以上起きる場合です。
この状態が続くと、以下のような悪循環が生じます。
- 深い睡眠(ノンレム睡眠)が分断される
- 翌朝になっても疲労感が残る
- 日中の眠気・集中力低下が続く
- 免疫機能や心血管機能への悪影響が蓄積する
50歳以上では2人に1人が夜間頻尿に悩んでいるとも言われており、決して珍しい症状ではありません。しかし、だからこそ「みんなそうだろう」と見過ごされやすい側面もあります。
夜間頻尿が引き起こすリスク

特に注意が必要なのは、夜間に3回以上トイレに起きるケースです。研究データによれば、夜間3回以上の排尿がある方の死亡率は、夜間排尿のない方の約2倍になるという報告があります。
これは夜間頻尿そのものが直接の死因になるというより、以下のような複合的な要因が重なるためと考えられています。
- 転倒・骨折リスク:夜間に半覚醒状態で起き上がることで、転倒事故が起きやすくなる
- 慢性的な睡眠不足:免疫機能の低下・血圧上昇・認知機能の衰えに影響する
- 基礎疾患の悪化:夜間多尿の背景に心不全・糖尿病・腎不全などが潜んでいるケースがある
「年だから仕方ない」で片付けず、原因を特定して対処することが大切です。
夜間頻尿の3つの原因

夜間頻尿の原因は、主に以下の3つに分類されます。
| 原因 | 主な特徴 | 関連する疾患・背景 |
|---|---|---|
| ① 膀胱容量の減少 | 1回の尿量は少なめ。急な尿意・尿漏れを伴うことが多い | 過活動膀胱、前立腺肥大症 |
| ② 睡眠障害 | 眠りが浅く、ついでにトイレへ行くパターン | 不眠症、睡眠時無呼吸症候群 |
| ③ 夜間多尿 | 1回の尿量が多い。夜の方が昼より尿が出る感覚 | 塩分・水分過多、高血圧、糖尿病、心不全、腎不全、加齢など |
複数の原因が重なっているケースも多く、自己判断での対処には限界があります。
① 膀胱容量の減少
膀胱が尿をためる容量が低下すると、少量の尿でも「もう限界」と感じてしまいます。このタイプの夜間頻尿では、1回あたりの尿量が少ないのが特徴です。
以下の症状に心当たりはありませんか?
- 急に強い尿意が来て、我慢できないことがある
- トイレに間に合わず、少し漏れてしまったことがある(切迫性尿失禁)
- (男性の場合)尿の勢いが弱い、排尿後に残尿感がある
こうした症状は、過活動膀胱や前立腺肥大症に伴うことが多く、適切な薬物療法や生活指導によって大幅な改善が期待できます。放置せず、一度泌尿器科で検査を受けることをおすすめします。
② 睡眠障害
夜間頻尿の中には、「起きたからトイレに行く」のではなく、「眠りが浅いから何度も目が覚め、ついでに排尿する」というパターンがあります。
睡眠の質を高めるための基本的なポイントを以下にまとめます。
- 日中に適度な運動をし、体を疲れさせる
- 昼寝は15〜30分以内にとどめる
- 就寝2時間前にぬるめのお風呂に入り、体温を下げる準備をする
- 寝る直前のスマートフォンやテレビは控える(ブルーライトが覚醒を促す)
- カフェイン・アルコールの夜間摂取を避ける
なお、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が潜んでいる場合、夜間多尿も同時に引き起こすことが知られています。いびきが激しい・昼間に強い眠気がある方は、こちらの可能性も念頭に置いてください。
③ 夜間多尿(夜間頻尿の原因の約80%)
夜間頻尿の原因のうち、最も多いとされるのが「夜間多尿」です。全体の約80%を占めるという報告もあります。
夜間多尿とは、1日の総尿量に占める夜間の尿量の割合が過剰に高い状態を指します。具体的な基準は以下の通りです。
- 65歳以上:夜間の尿量が1日の総尿量の33%以上
- 65歳未満:夜間の尿量が1日の総尿量の20%以上
夜間多尿の背景にある原因は、さらに3つに分けられます。
原因A:水分・塩分の摂りすぎ
塩分を多く摂ると、血液中のナトリウム濃度が上昇します。体はそのバランスを保つために水分を体内に溜め込もうとし、特に足元にむくみとして蓄積されます。
日中は重力で足に水分がとどまりますが、夜に横になると重力の影響がなくなり、蓄積していた水分が一気に腎臓へ流入します。腎臓がその水分を処理するため、就寝後1〜2時間で尿意を感じるというメカニズムです。
対策として、夕食以降の塩分・水分を控えること、そして夕方に軽いウォーキングや足首の運動をして、日中のうちにむくみを解消しておくことが有効です。
原因B:基礎疾患・服用薬の影響
以下の疾患は、夜間多尿を引き起こすリスクがあります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 心不全
- 慢性腎不全
- 睡眠時無呼吸症候群
また、意外に見落とされがちなのが服用中の薬の影響です。特に、高血圧治療でよく処方されるカルシウム拮抗薬(アムロジピン、ノルバスクなど)は、夜間多尿を引き起こすことがあると近年の研究で報告されています。
日本人の約3人に1人が高血圧と言われており、該当する方も多いかと思います。ただし、自己判断で薬を中断するのは絶対に避けてください。気になる場合は必ず主治医にご相談ください。カルシウム拮抗薬以外にも高血圧の治療薬は多数あり、相談次第で変更できる場合もあります。
原因C:加齢によるホルモン変化とふくらはぎの筋力低下
健康な状態では、夜間にバソプレシン(抗利尿ホルモン)という物質が分泌され、睡眠中の尿産生を抑制しています。しかし加齢とともにこのホルモンの分泌量が夜間に低下するため、高齢になるほど夜間多尿になりやすくなります。
また、ふくらはぎの筋力低下も深く関係しています。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、下半身の静脈血を心臓へ送り返すポンプ機能を担っています。この機能が衰えると、夕方にかけて足に余分な水分が溜まりやすくなります。
若い方であれば昼間のうちにこの水分を処理できますが、加齢とともにその能力が低下し、結果として夜間の尿量増加につながります。ふくらはぎを鍛えるウォーキングやカーフレイズ(つま先立ちの運動)が予防に役立ちます。
すぐに泌尿器科を受診すべきケース

以下の症状が夜間頻尿と同時に現れている場合は、速やかに泌尿器科専門医を受診してください。重大な疾患が潜んでいる可能性があります。
- 排尿時に痛みや灼熱感がある(尿路感染症・尿道炎の可能性)
- 尿に血が混じる(血尿):膀胱がん・前立腺がん・腎臓がん・尿路結石など
- 排尿が極端に細い・途切れる(前立腺肥大症の進行など)
- 体重増加・足のむくみが急に悪化した(心不全・腎不全の可能性)
所沢・入間・狭山・東村山・清瀬・富士見・ふじみ野・川越など西埼玉・西東京エリアにお住まいの方は、所沢いそのクリニック(泌尿器科・内科)にお気軽にご相談ください。
セルフチェック:排尿日誌のすすめ

夜間頻尿でお悩みの方に、ぜひ取り組んでいただきたいのが「排尿日誌」です。
1回の排尿量が50mL程度なのか、200〜300mL前後なのかによって、頻尿の原因はまったく異なります。記録することで、医療機関での診察がスムーズになるだけでなく、自分の生活習慣を見直すきっかけにもなります。
排尿日誌の始め方
- 目盛り付きのコップ(計量カップ)を用意する:100円ショップやネット通販で入手可能
- ゆっくり過ごせる日を選ぶ:外出が少ない休日がおすすめ
- 2〜3日間、記録を続ける:排尿した時間と尿量(mL)をメモする
- 飲んだ水分の量も記録する:いつ・何を・どれだけ飲んだかを合わせて記録するとより正確
記録を医療機関に持参するだけで、「どのタイプの夜間頻尿か」の特定が格段に早くなります。
よくある質問(FAQ)

Q. 夜間頻尿は何回から受診すべきですか?
夜間2回以上トイレに起きる状態が続いている場合は、一度泌尿器科を受診することをおすすめします。
1回であっても、排尿時痛・血尿などの症状を伴う場合はすぐに受診してください。
Q. 夜間頻尿は治りますか?
原因によりますが、多くのケースで改善が期待できます。
過活動膀胱や前立腺肥大症による場合は薬物療法が有効です。
夜間多尿は生活習慣の改善や基礎疾患の治療で軽減することがあります。まず原因を特定することが出発点です。
Q. 夜間頻尿に市販薬は効きますか?
市販の頻尿薬(八味地黄丸など漢方薬含む)が一定の効果を示すことはありますが、原因によって最適な治療は異なります。血尿・排尿痛がある場合や、2週間以上改善しない場合は自己判断での対処を続けず、専門医に相談してください。
Q. 子供でも夜間頻尿になることはありますか?
小児では「夜尿症(おねしょ)」という形で現れることが多く、成人の夜間頻尿とはメカニズムが異なります。お子様の頻尿についても泌尿器科でご相談いただけます。
まとめ

夜間頻尿の原因は「膀胱容量の減少」「睡眠障害」「夜間多尿」の3つに大別され、夜間多尿が約80%を占めると言われています。
それぞれの原因に合わせた対処が必要であり、加齢や生活習慣だけでなく、基礎疾患・服用薬が関わっているケースも少なくありません。
まずは排尿日誌で自分のパターンを把握し、症状が続くようであれば早めに泌尿器科を受診することをおすすめします。
夜ぐっすり眠れる生活は、全身の健康の土台です。
ひとりで悩まずに、ぜひご相談ください。

