尿管結石を防ぐ食事と日常生活

院長ブログ

こんにちは!所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。

「ほうれん草もチョコも、ずっと我慢してきました。それなのにまた石が……」
診察室でこの言葉を聞くたびに、もっと早く正しい情報をお伝えしたかったと感じます。
実は、石ができた本当の原因は「食べたもの」ではなく、「腸の中でシュウ酸を排泄できなかったこと」にあります。
正しいメカニズムを知れば、ほうれん草もチョコも食べながら予防できます。

尿管結石とはどんな病気か

尿にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが溶け込んでいます。
これは誰の尿にも含まれる正常な成分です。
ところが、何らかの原因でこれらの成分が溶け切れなくなると、小さな結晶として固まり始め、腎臓の中で少しずつ成長して「石」になります。

そしてある日、その石が腎臓から細い尿管へ落ちて詰まる。
これが「尿管結石」です。
尿管の直径はわずか数ミリ。そこに石が詰まると尿の流れが止まり、脇腹や背中を内側からえぐられるような激痛が起こります。
冷や汗・吐き気・震えをともなうケースも多く、救急搬送が必要になることも珍しくありません。

📊 知っておきたい数字

日本人男性の約7人に1人が生涯に一度は尿管結石を経験し、一度発症した方の約半数が10年以内に再発するとされています。
「自分は大丈夫」と思っていた方が、ある日突然救急車を呼ぶことになるのがこの病気の怖さです。

なりやすい人の5つの特徴

以下に当てはまる方は、特に意識した予防が必要です。

① メタボ体型・高カロリーな食生活

肥満や高脂肪・高カロリーな食生活は、尿中に石の成分を増やす原因になります。
中性脂肪や尿酸値が高い方も注意が必要です。

② 水分摂取が少ない

夏場に屋外で働く方や、デスクワークでトイレを我慢しがちな方は要注意です。
尿が濃くなるほど結晶が固まりやすくなります。

③ カルシウムが不足している

「カルシウムを摂りすぎると石になる」と誤解している方が多いですが、実は逆です。
カルシウムが不足している方ほど結石になりやすいことがわかっています。

④ 以前に結石になったことがある

再発リスクが高く、継続的な予防がとても重要です。

⑤ 家族に結石の方がいる

体質的なリスクがあるため、特に意識して予防に取り組んでください。
所沢・入間・狭山・東村山・清瀬・富士見市・川越エリアで泌尿器科をお探しの方は、当クリニックへお気軽にご相談ください。

石ができる本当のメカニズム

日本人に最も多い結石は「シュウ酸カルシウム結石」で、全体の約80%を占めます。
このメカニズムを理解することが、正しい予防につながります。

シュウ酸の正常な「出口」

シュウ酸は、ほうれん草・チョコレート・ナッツ・紅茶などに含まれる成分です。
このシュウ酸は本来、食事で摂ったカルシウムと腸の中で結合して「シュウ酸カルシウム」となり、便として排泄されます。
つまり、腸の中に十分なカルシウムがあれば、シュウ酸はそこで捕まえられて体の外へ出ていきます。

カルシウム不足が「漏れ」を生む

問題が起きるのは、カルシウムが不足しているときです。
腸で捕まえてもらえなかったシュウ酸は体内に吸収され、血液に乗って全身を巡り、最終的に尿の中に漏れ出します。
そして今度は尿の中のカルシウムと結合して石へと成長していくのです。

⚠️ よくある誤解

問題は「ほうれん草を食べたこと」ではなく、「カルシウムなしでほうれん草を食べたこと」です。「ほうれん草をやめたのに石ができた」という方は、カルシウムを意識して摂れていたか、毎日しっかり水を飲めていたかを振り返ってみてください。

「セット食べ」で予防する鉄則

シュウ酸を含む食品を食べるときは、必ずカルシウムを含む食品と一緒に食べること。これが結石予防の最重要ルールです。

シュウ酸を含む食品 合わせたいカルシウム源 おすすめの組み合わせ方
ほうれん草 かつお節・しらす・ちりめんじゃこ おひたしにかつお節をたっぷりかけ、しらすを和える
チョコレート 牛乳 チョコレートと一緒にコップ1杯の牛乳を飲む
ナッツ 小魚 「小魚アーモンド」を選ぶだけで自然にセット完成
コーヒー・紅茶 牛乳 コーヒーフレッシュではなく本物の牛乳を少量加える

「カルシウムを摂りすぎても大丈夫ですか?」とよく聞かれますが、食事由来のカルシウムは全く問題ありません。
腸の中でシュウ酸と結合して便に出ていく分は体に何の悪影響もなく、むしろ現代の日本人は慢性的なカルシウム不足です。
乳製品をなんとなく控えていた方こそ、今日から積極的に摂り入れてください。

クエン酸も組み合わせて

もう一つ意識してほしいのがクエン酸です。
レモンや梅干しに含まれるこの成分は、尿の中でカルシウムとシュウ酸がくっつくのをブロックし、石が育つのを防いでくれます。
水にレモンを絞って飲んだり、食事に酢の物を取り入れたりするだけで十分な効果が期待できます。

✅ 食事による予防の3本柱

セット食べ(シュウ酸×カルシウム)水分補給クエン酸(レモン・梅干し・酢)の3つを意識するだけで、食事による予防力は大きく変わります。

水分補給の具体策

食事の工夫と同じくらい、いえそれ以上に重要なのが水分補給です。
水をしっかり飲んで1日の尿量として2L以上を確保することで、小さな結晶を育つ前に流し切ることができます。
そのためには1日2〜2.5Lの摂取が目安です(コップ1杯200mlとすると10杯以上)。
夏場・運動後・入浴後はさらに多めに補給してください。

何を飲むかが重要

「水分を摂ればいい」とジュースやコーラを大量に飲む方がいますが、これは逆効果です。
糖分の多い飲み物は中性脂肪・尿酸値の上昇につながり、尿酸結石という別タイプの石のリスクまで高めてしまいます。
水・麦茶など、カロリーゼロのものを選んでください。飽きずに続けるために、複数のお茶を組み合わせるのもよい工夫です。

こまめに飲む4つのタイミング

一気飲みではなく、こまめに飲むことが重要です。
起床後・食事中・入浴前後・就寝前の4つのタイミングを意識するだけで、自然と習慣になります。

夜間結石のリスクを下げる「夕食の時間」

意外な落とし穴が、寝る直前の食事です。
食べてすぐ寝ると、尿中の成分濃度が急激に上がり、石が作られやすい時間帯を自分で作ってしまいます。
夕食は就寝4時間前までに済ませるのが理想です。

積極的に減らすべき食事と生活習慣

プリン体の多い食品・アルコール

レバー・魚卵・干物・えびに多く含まれるプリン体は体内で尿酸に変わり、尿酸結石や痛風のリスクを高めます。
特にビールはプリン体が多い上に利尿作用で脱水を引き起こすため、二重のリスクになります。
完全にやめる必要はありませんが、量を減らすだけでも効果があります。

塩分の摂りすぎ

塩分を多く摂ると腎臓から尿中へ排泄されるカルシウム量が増え、シュウ酸との結合機会が増えて石ができやすくなります。
加工食品・外食・インスタント食品・ファストフードは塩分が高い傾向があるため、なるべく控えめにしましょう。

動物性タンパクの過剰摂取

肉類を食べすぎると尿が酸性に傾き、結石が育ちやすくなります。
バランスよく摂ることが大切です。

果糖(フルクトース)を多く含む清涼飲料水

清涼飲料水を習慣的に飲んでいると、尿中のカルシウムやシュウ酸の排泄が増え、石ができやすくなります。
「水分補給にスポーツドリンクやジュースを飲んでいた」という方はここも見直してみてください。

💡 根本的な予防の考え方

何か一つを完全に禁止する必要はありません。
バランスよく食べ、食べすぎ・飲みすぎ・太りすぎを避けることが重要です。
定期的な運動で適正体重を維持することも、結石の予防に直結します。

定期検査と再発予防

一度でも尿管結石になった方に特に伝えたいのは、「石を取ったら終わり」ではないということです。
処置で石がなくなっても、同じ生活を続けていれば再び石ができます。
結石は体質や生活習慣が背景にあるものがほとんどだからです。

だからこそ、定期的な尿検査・腹部エコー・CT検査で石の有無を継続的に確認することが大切です。
また、結石の種類によっては血液検査・尿検査で代謝異常を調べることもあります。
副甲状腺機能亢進症など、ホルモンの病気が結石の背景に隠れていることもあり、その場合は根本の原因を治療することが最も確実な予防になります。

「自分は石ができやすい体質だから仕方ない」と諦めないでください。
結石の種類と体質に合った予防策を一緒に考えることができます。
結石は、生活習慣と向き合い続けることで十分にコントロールできる病気です。

まとめ

  • ほうれん草はカルシウムと一緒に食べれば問題なし。
    シュウ酸を含む食品は「セット食べ」で腸の中で処理するのが鉄則。
  • 1日2〜2.5Lの水分(水・お茶・無糖)を摂り、尿量2L以上を確保して小さな結晶を流し出す。
    こまめに飲み、夕食は就寝4時間前までに。
  • メタボ・カルシウム不足・高塩分・高プリン食・糖分の多い飲料が石を育てる。
    バランスのいい食事と適正体重の維持が根本的な予防。

今日からまず一つ、セット食べと水分補給を試してみてください。
一度でも結石になったことがある方は、次の受診で「自分の結石のタイプと予防法」を主治医に確認してみましょう。

よくある質問

Q. ほうれん草を食べると尿管結石になりますか?
A. ほうれん草だけが原因で石ができるわけではありません。問題は「カルシウムなしでほうれん草を食べること」です。ほうれん草に含まれるシュウ酸は、食事中のカルシウムと腸の中で結合して便として排泄されます。かつお節・しらすなどカルシウムを含む食品との「セット食べ」を実践すれば、食べても問題ありません。

Q. 尿管結石の予防に1日どのくらい水を飲めばいいですか?
A. 1日の尿量として2L以上を確保することが目安です。そのためには水分摂取量として2〜2.5Lが必要です。コップ1杯200mlとすると1日10杯以上が目標になります。夏場・運動後・入浴後はさらに多く補給しましょう。飲み物は水・お茶・無糖の紅茶など糖分ゼロのものを選んでください。

Q. 尿管結石は再発しますか?
A. 一度尿管結石になった方の約半数が10年以内に再発すると言われています。結石は体質や生活習慣が背景にあるため、処置で石を取り除いても同じ生活を続けると再発リスクは高いままです。食事・水分補給の見直しと、定期的な尿検査・腹部エコーなどによる継続的な確認が欠かせません。

Q. カルシウムを摂りすぎると結石になりますか?
A. 食事由来のカルシウムは、摂りすぎによる結石リスクの増加は基本的に心配いりません。むしろカルシウムが不足している方のほうが結石になりやすいことがわかっています。腸の中でシュウ酸をカルシウムが捕まえて便に排泄する仕組みがあるため、食事でのカルシウム摂取は積極的に行うことが推奨されます。 

この記事を書いた人
院長 磯野誠

 
略歴
・防衛医科大学校卒業 医師免許取得
・研修医(防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院)
・陸上自衛隊武山駐屯地医務室(神奈川県横須賀市)で総合診療に従事
・専修医(防衛医科大学校病院)で泌尿器科診療に従事
・陸上自衛隊善通寺駐屯地医務室(香川県善通寺市)で総合診療に従事
・防衛医科大学校医学研究科
・デュッセルドルフ大学泌尿器科学講座(ドイツ連邦共和国)で泌尿器科がんの研究に従事
・陸上自衛隊第11旅団司令部(北海道札幌市)医務官
・恵佑会札幌病院泌尿器科、札幌医科大学病理学第一講座で泌尿器科がんの診療・研究に従事
・我孫子東邦病院泌尿器科で女性泌尿器科・前立腺肥大症・尿路結石の診療に従事
・所沢いそのクリニック開院

資格・所属学会
・医学博士
・日本泌尿器科学会 専門医・指導医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(手術指導医;前立腺・膀胱、仙骨膣固定術)
・日本内視鏡外科学会 技術認定医
・日本透析医学会
・日本生殖医学会
・日本メンズヘルス医学会 テストステロン治療認定医
・ボトックス講習・実技セミナー(過活動膀胱・神経因性膀胱)修了
・がん診療に携わる医師に対する緩和ケア講習修了
・臨床研修指導医

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