尿潜血・血尿・腎臓の数値が異常|泌尿器科と腎臓内科、どちらを受診すべきか

院長ブログ

所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。

健康診断の結果票に「尿潜血」「クレアチニン高値」「eGFR低下」などの異常を指摘されたとき、「泌尿器科と腎臓内科、どちらに行けばいいのか」と迷う方は非常に多くいます。

この記事では、2つの診療科の違いと、最短で正しい科に辿り着く受診の流れをわかりやすく解説します。健診結果票を手元に置きながら読み進めると、ご自身のケースがより明確になります。

1. なぜ「どっちの科か」で迷うのか

健康診断の結果票には「尿潜血」「尿タンパク」「クレアチニン」「eGFR」といった項目が並んでいます。これらはすべて、腎臓や尿路に関わる数値です。

eGFRとは:腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過できているかを示す指標。60未満で慢性腎臓病の疑いがあるとされます。

問題は、泌尿器科と腎臓内科のどちらも「腎臓・尿路」に関係する診療科であるため、病院のホームページを見ても守備範囲が重なって見え、「どちらが先か」の判断がつきにくい点にあります。

これは患者さんの知識不足ではなく、2つの科の役割分担が患者側から見えにくいという構造的な問題です。

参考として、尿潜血は男性の約3.5%、女性の約12.3%に認められ、慢性腎臓病の患者数は全国で約1,480万人(成人の約7〜8人に1人)にのぼります。異常を指摘されてもそのまま放置している方が多いのが現状です。


泌尿器科が診ること 「形」の異常を専門とする科 

泌尿器科は、腎臓・尿管・膀胱・尿道という「尿の通り道」の構造的な異常を見つけて治療する診療科です。水道管にたとえるなら「配管の詰まりや故障を直す専門家」のイメージです。

泌尿器科が対象とする主な疾患

  • 腎臓がん・膀胱がん・尿管がん
  • 尿管結石・腎結石
  • 前立腺肥大・前立腺がん
  • 尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)

泌尿器科の強み

超音波(エコー)検査やCT検査を用いて、腎臓・膀胱・尿管に腫瘍や結石がないかをその場で画像として確認できます。
「形の問題」を素早く見つけられる設備と技術を持った専門科です。


腎臓内科が診ること 「機能」の異常を専門とする科 

腎臓内科は、腎臓がどれだけ正常に血液をろ過・老廃物を排出できているか、という「機能」の異常を診る診療科です。
同じ水道管のたとえでいえば「管の中を流れる水の質を管理する専門家」です。

腎臓内科が対象とする主な疾患

  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 腎炎(IgA腎症など)
  • 糖尿病性腎症
  • 高血圧による腎障害

腎臓内科の強み

クレアチニン・eGFR・尿タンパクの数値を継続的にモニタリングし、腎機能の低下を食い止める長期管理が専門です。
ただし、がんや結石を画像で探すことは専門外であり、この点が泌尿器科との最大の違いです。


あなたのケースはどちらの科?症状・数値別の判断基準

ケース① 肉眼でわかる血尿が出た → 迷わず泌尿器科へ

トイレの水が赤くなった、尿がピンク色になったという「肉眼的血尿」は、膀胱がん・尿管がん・尿管結石が原因の可能性があります。

特に注意が必要なのは「痛みのない血尿」です。がんのサインであることが少なくありません。
「次の日には普通に戻ったから大丈夫」という判断は非常に危険です。
一度でも肉眼で血尿を確認した場合は、症状が消えていても必ず泌尿器科を受診してください。

ケース② 健診で「尿潜血+」と指摘された → まず泌尿器科へ

尿潜血とは、目では見えないごく少量の血液が尿に混じっている状態です。
結果票に「+」「1+」「2+」などと記載されている場合が該当します。

原因には膀胱炎・結石・がんなど泌尿器科の疾患が多く含まれるため、まず泌尿器科でエコー検査や尿細胞診を行い、構造的な異常がないことを確認するのが正しい手順です。

「女性だから膀胱炎だろう」と自己判断して放置することは禁物です。女性でも膀胱がん・腎臓がんは起こります。

ケース③ クレアチニン高値・eGFR低値のみ → 基本的に腎臓内科へ

クレアチニンは筋肉の代謝産物で、腎臓がしっかり機能していれば尿として排出されます。この値が高い、またはeGFRが60を下回っている場合は、腎臓の「機能」に問題がある可能性が高く、基本的には腎臓内科の領域です。

ただし、腎腫瘍や水腎症(尿の通り道が腫れた状態)が疑われる場合は、先に泌尿器科でのエコー確認が必要なこともあります。迷う場合はまず泌尿器科に相談するのが安全です。

ケース④ 尿タンパクのみ陽性 → 腎臓内科へ

尿タンパクは、腎臓のフィルター(糸球体)が傷んでいるためにタンパク質が漏れ出している状態です。これは「機能」の問題であるため、腎臓内科が第一選択です。

ただし、尿潜血と尿タンパクが同時に陽性の場合は、まず泌尿器科で構造的異常を確認してから腎臓内科へという流れをとることが多いです。


迷ったら「まず泌尿器科」が最短ルートな理由

「自分のケースがどれにあたるかわからない」という場合も含め、迷ったらまず泌尿器科に行くことをおすすめします。

その理由は明確です。「がんを先に除外するため」です。

腎臓がん・膀胱がんは早期発見であれば治癒を目指せる病気ですが、発見が遅れるほど治療の選択肢が狭まります。
腎臓内科は機能を診る専門家であり、がんを画像で探すことは専門外です。

一方、泌尿器科ではエコー検査で腫瘍・結石の有無を短時間で確認できます。
「構造的に問題なし」が確認できてはじめて、機能の問題として腎臓内科へ繋ぐ。
これが最も安全で最短の受診ルートです。


泌尿器科で受けるエコー検査とは

「エコー検査」と聞いて不安に思う方もいるかもしれませんが、負担の少ない検査です。

項目 内容
方法 お腹にゼリーを塗り、プローブを当てるだけ
痛み なし
放射線 不使用(X線・CTとは異なる)
検査時間 数分程度
費用目安 3割負担で1,000〜2,000円程度(保険適用)
確認できること 腎臓の大きさ・形・腫瘍の有無・結石・膀胱の状態など

結果はその場で確認でき、異常があれば次のステップをすぐに相談できます。初診当日に受けられることも多く、「何週間も待つ」ようなハードルの高い検査ではありません。


腎臓内科に紹介されるタイミング

泌尿器科でエコー検査を受けて「構造的な異常なし」と確認できた場合、次のケースでは腎臓内科への紹介が行われることがあります。

  • 尿潜血が続いているのにエコー・CT・膀胱内視鏡検査で異常が見つからない場合
  • クレアチニン・eGFRの数値が継続的に悪化している場合
  • 尿タンパクが持続的に陽性で、腎炎や糖尿病性腎症が疑われる場合

泌尿器科と腎臓内科は対立関係ではなく、役割を分担しながら連携している関係です。紹介状があればスムーズに移行でき、検査データも共有されるため同じ検査を二度受ける手間も省けます。

腎臓の病気は長期管理が必要なケースが多いため、腎臓内科に「かかりつけ医」として継続的に診てもらう体制を作ることが、腎機能を長く守ることにつながります。


受診を放置するとどうなるか

「症状がないから大丈夫」と数年放置してしまう方が非常に多いですが、腎機能の低下は一度進むと基本的には元に戻りません。

慢性腎臓病が進行すると、最終的には透析が必要になります。透析とは腎臓の代わりに機械で血液をきれいにする治療で、週3回・1回あたり4〜5時間を要します。現在、日本では約34万人が透析治療を受けています。

一方、早期に発見して適切な管理を始めれば、腎機能の低下を大幅に遅らせることができます。

膀胱がん・腎臓がんも、早期発見であれば内視鏡手術や腹腔鏡手術で対応できるケースが多く、入院期間も短く済みます。
しかし進行してからでは、より大きな手術や化学療法が必要になります。

健診で一度でも異常値が出た方は、症状の有無にかかわらず、早めに受診の予約を入れることをおすすめします。


受診の判断基準まとめ

健診・症状の内容 受診先
肉眼でわかる血尿(赤い尿・ピンク色の尿) 泌尿器科(すぐに)
尿潜血+(陽性) 泌尿器科(まず)
クレアチニン高値・eGFR低値のみ 腎臓内科
尿タンパクのみ陽性 腎臓内科
尿潜血+尿タンパクが両方陽性 泌尿器科(まず)
どれに当てはまるかわからない 泌尿器科(まず)

「迷ったらまず泌尿器科」を合言葉に覚えておいてください。


よくある質問(FAQ)

Q. 女性でも泌尿器科を受診していいですか?

はい、問題ありません。女性の尿潜血・血尿も泌尿器科が対応します。女性にも膀胱がんや腎臓がんは起こりますので、「女性だから婦人科?」と迷わず泌尿器科を受診してください。


Q. 健診で毎年同じ項目が引っかかっています。今さら受診する意味はありますか?

あります。腎機能の低下は進行するほど治療の選択肢が減ります。毎年引っかかっているということは、慢性的な問題が進行している可能性があります。現在の数値と変化の傾向を専門医に評価してもらうことで、適切な対策を早めに始められます。


Q. 泌尿器科と腎臓内科、両方に行く必要はありますか?

基本的には泌尿器科を最初の窓口にし、必要であれば腎臓内科に紹介してもらう流れが効率的です。紹介状があれば検査データも共有され、二度手間を避けられます。


Q. エコー検査は予約が必要ですか?

多くの場合、初診当日に受けられます。ただしクリニックによって異なりますので、事前にお電話でご確認いただくとスムーズです。


まとめ

  • 泌尿器科は「形」の異常(がん・結石・構造的問題)を診る科
  • 腎臓内科は「機能」の異常(腎炎・慢性腎臓病・数値の管理)を診る科
  • 迷ったらまず泌尿器科でエコー検査を受け、がんを除外してから必要に応じて腎臓内科へ

健診結果票に異常があった日が、あなたの体が「そろそろ診てほしい」と発したサインです。最初の一歩を踏み出せれば、あとは医師が適切な道筋に案内します。気になる数値がある方は、ぜひお早めにご相談ください。


この記事は医師による監修のもと作成していますが、個別の症状・数値については必ず医療機関での診断をお受けください。

この記事を書いた人
院長 磯野誠

 
略歴
・防衛医科大学校卒業 医師免許取得
・研修医(防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院)
・陸上自衛隊武山駐屯地医務室(神奈川県横須賀市)で総合診療に従事
・専修医(防衛医科大学校病院)で泌尿器科診療に従事
・陸上自衛隊善通寺駐屯地医務室(香川県善通寺市)で総合診療に従事
・防衛医科大学校医学研究科
・デュッセルドルフ大学泌尿器科学講座(ドイツ連邦共和国)で泌尿器科がんの研究に従事
・陸上自衛隊第11旅団司令部(北海道札幌市)医務官
・恵佑会札幌病院泌尿器科、札幌医科大学病理学第一講座で泌尿器科がんの診療・研究に従事
・我孫子東邦病院泌尿器科で女性泌尿器科・前立腺肥大症・尿路結石の診療に従事
・所沢いそのクリニック開院

資格・所属学会
・医学博士
・日本泌尿器科学会 専門医・指導医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(手術指導医;前立腺・膀胱、仙骨膣固定術)
・日本内視鏡外科学会 技術認定医
・日本透析医学会
・日本生殖医学会
・日本メンズヘルス医学会 テストステロン治療認定医
・ボトックス講習・実技セミナー(過活動膀胱・神経因性膀胱)修了
・がん診療に携わる医師に対する緩和ケア講習修了
・臨床研修指導医

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