こんにちは!院長の磯野 誠です。
突然ですが、男性もしくはご家族の中に男性がいる皆さん。「男性で最も多いがん」をご存知でしょうか?
それが、今回お話しする「前立腺がん」です。
データによると、男性の9人に1人が一生のうちにかかるとされており、80歳以上の男性では半数以上が罹患しているとも言われています。 私も含め、男性である以上、誰にとっても無関係ではない病気なんですね。
「がん」と聞くと、「すぐに命に関わる怖い病気」というイメージを持つ方も多いと思います。 しかし、前立腺がんは少し性格が異なります。正しく知っていれば、必要以上に怖がる必要はありません。
今回は、泌尿器科専門医の視点から、前立腺がんの基礎とリスクについて分かりやすく解説します。
■そもそも「前立腺」ってなに?
まずは基本からお話ししましょう。
前立腺は、男性にだけある臓器です。大きさはだいたいクルミくらい。膀胱のすぐ下にあり、尿が外に出る通り道の途中に位置しています。 主な役割は、精液の一部を作って精子を守ることです。
前立腺には少し厄介な特徴があります。それは、多くの男性で「年を取るにつれて大きくなりやすい」ということです。 尿の通り道を囲む場所にあるため、ここが大きくなると「尿の勢いが弱い」「出にくい」といった悩みにつながることがあるのです。
■前立腺がん=すぐ命に関わる?
前立腺がんは、この前立腺の細胞が長い時間をかけて変化し、がん化していく病気です。 患者数は男性のがんの中で最も多いですが、その進行スピードには特徴があります。
ポイント:進行は比較的ゆっくり 多くの場合、年単位でゆっくり変化していきます。そのため、初期症状はほとんどなく、健康診断などの血液検査(PSA検査)で見つかるケースが非常に多いです。
進行の速さや年齢によっては、「今すぐ治療を始めない」という選択肢が成り立つこともあるほど。 だからこそ、「がん=即手術」と決めつけるのではなく、病気の性質を見極めてどう向き合うかを考えていくことが大切なんです。
■医学的に分かっている「なりやすい人」4つの特徴
ネット上には「射精回数が多いとリスクが上がる」といった噂もありますが、現時点で医学的に明確な根拠はありません。 では、本当に注意すべきリスク因子とは何でしょうか?
1. 加齢 最大の要因は年齢です。50歳を過ぎたあたりから増え始め、60代・70代で最も多く見つかります。細胞の変化が長い年月で蓄積するためと考えられています。
2. 家族歴(遺伝) お父様やご兄弟など、血縁関係のあるご家族に前立腺がんの方がいる場合、リスクが高くなることが分かっています。特にご家族が若い年齢で発症している場合は要注意です。
3. 生活習慣の乱れ 特に「動物性脂肪の多い食事」や「運動不足」はリスクに関連していると言われています。食生活が欧米化した地域ほど前立腺がんが多いというデータもあります。
4. 高身長や肥満 身長が高い方や肥満傾向の方も、リスクがやや高い可能性があります。特に肥満の場合、がんが見つかりにくかったり、進行した状態で見つかりやすいという指摘もあります。
次回予告 「自分も当てはまるかも…」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。 次回は、「見逃してはいけない前立腺がんの症状」と、早期発見の鍵を握る「PSA検査」について詳しくお話しします。
当院では、患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせた診療を心がけています。不安なことがあれば、いつでもご相談くださいね。


