尿道から膿が出る

尿道から膿(うみ)が出てくると、驚きや不安を感じる方も多いかと思います。膿とは、主に体内の炎症によって生じる黄白色の粘液状分泌物のことで、白血球や壊れた細胞組織などが含まれています。尿道から出る膿は多くの場合「尿道炎」が疑われ、特に性感染症(STI:Sexually Transmitted Infection)が原因となるケースがよく見られます。

膿の他に、排尿時の痛みやしみる感覚(排尿痛)、尿道の違和感やかゆみ、下腹部痛などを伴うこともあるため、早期に医療機関を受診し正確な診断を受けることが重要です。放置していると症状が悪化したり、周囲のパートナーにも感染したりする可能性があります。

尿道から膿が出る

膿が出る原因として考えられる代表的な病気

1. クラミジア尿道炎

特徴

クラミジア・トラコマティスという病原体が尿道やのど(咽頭)、女性の場合は腟や子宮頸管などに感染して炎症を起こします。日本では性感染症の中でも発症率が高いとされ、特に10代後半から20代の若年層に多くみられます。

症状

薄い膿が出る、または透明に近い分泌物がみられる場合があります。排尿痛は軽めで、自覚症状がほとんどないまま進行することも少なくありません。

感染経路

性行為(膣性交・肛門性交・オーラルセックス)やキスなど、粘膜同士の接触でうつることがあります。症状が出ていないパートナーからも感染するリスクがあるため注意が必要です。

2. 淋菌感染症(淋病)

特徴

淋菌という細菌が引き起こす性感染症です。潜伏期間は2日から1週間程度と比較的短いのが特徴で、男性では主に尿道炎、女性では子宮頸管炎として発症します。

症状

強い排尿痛とともに、黄色がかった膿が尿道から分泌されることが多く、クラミジア感染症よりも痛みが鋭い・強い傾向にあります。放置すると前立腺や精巣上体への感染へ進行し、不妊の原因となることもあるため、早めの治療が大切です。

耐性菌の問題

淋菌は抗菌薬に対する耐性(薬剤耐性)を獲得しやすい菌として知られています。そのため、治療では複数の薬剤を使うケースや、最新のガイドラインに沿った薬選びが必要となります。

3. マイコプラズマ・ウレアプラズマ

特徴

マイコプラズマやウレアプラズマは、細菌とウイルスの中間のような微生物で、性行為やキスを介して尿道や咽頭に感染します。クラミジアや淋菌と同等の頻度で広がっているとされますが、日本では比較的最近になって一般的な検査が行われるようになりました。

症状

薄い膿や透明な分泌物が見られるケースが多く、自覚症状が乏しい場合もあります。排尿時に軽い痛みやむずがゆさが生じることもあります。

検査

マイコプラズマ・ジェニタリウムに関しては保険適用となる検査が行えますが、ウレアプラズマや他のマイコプラズマ属は自費診療になることもあります。咽頭と尿道を同時に検査する場合、保険上の制限があるため注意が必要です。

4. ヘルペスウイルス(単純ヘルペス)

特徴

HSV-1型またはHSV-2型の単純ヘルペスウイルスが原因で、性器ヘルペスとして知られています。感染後はウイルスが神経節に潜伏するため、一度治っても免疫力の低下やストレスなどで再発するリスクがあります。

症状

尿道内よりも性器や肛門付近に水ぶくれや潰瘍(ただれ)ができやすく、痛みやかゆみ、ヒリヒリ感を伴うのが典型的です。尿道炎と同時に発症した場合、膿よりも潰瘍の症状が目立つことがあります。

5. トリコモナス

特徴

トリコモナス原虫が原因の性感染症で、男性では尿道や前立腺、女性では膣や子宮頸管に寄生して炎症を引き起こします。

症状

男性は軽症のことが多く、気づきにくい場合がありますが、尿道炎として膿や排尿時の不快感が出ることも。女性では黄緑色〜泡状の帯下(おりもの)が特徴的です。

6. カンジダ

特徴

カンジダは真菌(カビ)の一種で、性感染症として取り扱われることもあれば、日常生活での免疫力低下や長期間の抗生物質使用などが原因で増殖することもあります。

症状

男性の場合はカンジダ性包皮炎や尿道炎を起こすことがあり、亀頭部分の赤みやかゆみ、白いカスのような分泌物が出ることがあります。女性では膣カンジダ症が多く、白いヨーグルト状のおりものや強いかゆみが特徴的です。

尿道炎とは

尿道炎とは、尿道内に菌やウイルス、原虫などが侵入して炎症が起こる状態です。男性は女性よりも尿道が長いため、はっきりとした症状が出やすい一方で、女性の場合は「膀胱炎」と診断されることが多くなります。

主な症状

  • 排尿時の痛みや熱感(しみる感じ)
  • 尿道口からの分泌物(膿や粘液など)
  • 下腹部や会陰部の違和感、まれに発熱

尿道炎の大半は性感染症が関与し、クラミジアや淋菌がもっとも多い原因とされます。ただし、異所性感染といって、尿道周辺の不衛生が続くことで一般細菌が増殖し、尿道に感染を起こす場合もあります。

膿の色から見える可能性

透明~白色

クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどの感染が疑われます。症状が軽いため放置されがちですが、適切な治療を受けないまま慢性化すると、不妊や他の部位への感染リスクを高める恐れがあります。

黄色~黄緑色

淋菌感染や一部の細菌感染が疑われます。排尿時に強い痛みを伴いやすく、放置すると症状が急激に悪化しやすいのが特徴です。黄緑色の場合はクラミジアとの混合感染もあり得るため注意が必要です。

白色でカッテージチーズ状

カンジダによる感染が見られることがあります。男性では亀頭や包皮への炎症、女性では膣内での白いおりものが増え、かゆみを伴うことが一般的です。

膿の色

検査・診断の流れ

1. 問診

医師が性行為の状況や症状の経過、排尿時の痛み・膿の状態などを聞き取ります。恥ずかしいと感じるかもしれませんが、正確な情報提供が適切な検査と治療に直結します。

2. 尿検査

初尿(排尿の最初の部分)を採取することで、尿道内にいる病原菌を検出します。クラミジアや淋菌、マイコプラズマ・ウレアプラズマなどの感染が疑われる場合は、PCR検査を行うことも一般的です。

3. 血液検査

エイズ(HIV)や梅毒など、他の性感染症の合併を調べるために行われる場合があります。一度尿道炎と診断された方でも、複数の性感染症に同時にかかっているケースもあるため要注意です。

4. ぬぐい液の検査

尿道口付近の分泌物を綿棒で採取し、顕微鏡や培養検査などを行うこともあります。

治療の方法と再発予防

抗菌薬や抗ウイルス薬の投与

クラミジアや淋菌などの細菌感染では、内服または注射の抗菌薬が処方されます。耐性菌の問題が指摘されている淋菌の場合、ガイドラインに沿った適切な薬が選ばれます。ヘルペスの場合は抗ウイルス薬、カンジダの場合は抗真菌薬など、原因病原体によって薬剤が変わります。

治療期間と注意点

症状がおさまっても、医師から指示された期間は薬の服用や外用薬の使用を続けることが大切です。症状が消えたからと途中でやめると、再発や耐性菌の出現につながる恐れがあります。

パートナーの同時検査・治療

尿道炎や性感染症はパートナー間で「ピンポン感染」を起こすことがあります。自分だけ治療しても、パートナーが無症状のまま感染源として残っていれば、再び感染してしまう可能性が高いです。性交渉のあるパートナーにも検査を受けてもらい、一緒に治療を進めることが望ましいでしょう。

生活習慣の見直し

抵抗力の低下は、性感染症だけでなく全身の感染症リスクを高めます。十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけ、ストレスを軽減することも再発予防に有効です。

治療について

こんな症状があれば早めに受診を

  • 尿道から黄白色や透明の分泌物が続く
  • 排尿時に痛みやしみる感じがある
  • 下腹部や会陰部にうずくような痛みがある
  • 性器や尿道口にかゆみや腫れ、水ぶくれなどがある
  • 性行為をした相手が性感染症にかかっている、またはかもしれない

上記のような症状が見られる場合、できるだけ早く泌尿器科や皮膚科、婦人科など適切な診療科を受診してください。放置すると炎症が広がり、男性は前立腺炎や精巣上体炎、女性は子宮頸管炎や骨盤内感染症など、より重い状態を招く恐れがあります。

まとめ

尿道から膿が出るという症状は、性感染症をはじめとする尿道炎が原因であることが多く、膿の色や排尿時の痛みの程度によっては特定の病原体が疑われます。なかでもクラミジアや淋菌は頻度が高く、他のマイコプラズマやウレアプラズマ、カンジダ、ヘルペスウイルスなども考慮が必要です。

性行為を通じて感染するケースが多い一方で、不衛生な環境が引き金になることもあります。いずれにしても、症状の有無にかかわらず定期的に検査を受けたり、コンドームを正しく使用したりすることが大切です。もしも尿道から膿が出る、排尿時に痛みを感じるなどの異変があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。適切な治療を受ければ多くの場合、速やかに改善する可能性が高いです。

あなたやパートナーを守るためにも、恥ずかしがらずに専門家に相談し、正しい知識を身につけて適切なケアを行いましょう。

この記事を書いた人
院長 磯野誠

 
略歴
・防衛医科大学校卒業 医師免許取得
・研修医(防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院)
・陸上自衛隊武山駐屯地医務室(神奈川県横須賀市)で総合診療に従事
・専修医(防衛医科大学校病院)で泌尿器科診療に従事
・陸上自衛隊善通寺駐屯地医務室(香川県善通寺市)で総合診療に従事
・防衛医科大学校医学研究科
・デュッセルドルフ大学泌尿器科学講座(ドイツ連邦共和国)で泌尿器科がんの研究に従事
・陸上自衛隊第11旅団司令部(北海道札幌市)医務官
・恵佑会札幌病院泌尿器科、札幌医科大学病理学第一講座で泌尿器科がんの診療・研究に従事
・我孫子東邦病院泌尿器科で女性泌尿器科・前立腺肥大症・尿路結石の診療に従事
・所沢いそのクリニック開院

資格・所属学会
・医学博士
・日本泌尿器科学会 専門医・指導医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(手術指導医;前立腺・膀胱、仙骨膣固定術)
・日本内視鏡外科学会 技術認定医
・日本透析医学会
・日本生殖医学会
・日本メンズヘルス医学会 テストステロン治療認定医
・ボトックス講習・実技セミナー(過活動膀胱・神経因性膀胱)修了
・がん診療に携わる医師に対する緩和ケア講習修了
・臨床研修指導医

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