こんにちは。所沢いそのクリニック院長の磯野 誠です。
トイレで用を足したあと、ふと便器を見て「あれ?今少し赤かったかも?」「痛みはないけど、いつもと色が違う気がする……」
もし一度でもそう思ったことがあるなら、この記事はあなたのためのものです。
今回は「膀胱がんの本当の怖さと、早期発見の重要性」、そしてあなたが最も不安に思う「検査の痛みと流れ」について正直にお話しします。
最初に、医師として最もお伝えしたい結論を言います。
「痛みがない血尿」は、絶対に放置しないでください。
実は膀胱がんで一番怖いのは、病気そのものよりも「検査が怖くて受診を先延ばしにしてしまうこと」です。これが最も健康を損なうリスクになります。
1. なぜ「先延ばし」が一番の損なのか?
膀胱がんには、一気に状況が変わる「運命の境界線」があります。
日本で膀胱がんと診断される人は年間約2万4,000人以上。特に男性に多く、決して珍しい病気ではありません。この病気の怖さは「がんの大きさ」よりも「根の深さ」にあります。
境界線は「筋肉の層」に届くかどうか
膀胱の壁は層になっています。一番内側に「粘膜」があり、その奥に分厚い「筋肉の層」があります。
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初期(筋層非浸潤性): がんが内側の粘膜に留まっている段階。内視鏡手術で切除でき、膀胱も温存可能です。5年生存率は80〜90%以上と非常に高いです。
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進行(筋層浸潤性): がんが奥の「筋肉の層」に達した段階。筋肉には血管やリンパ管が豊富なため、全身転移のリスクが急激に跳ね上がります。
筋肉まで達してしまうと、内視鏡だけでは治せません。「膀胱の全摘出」や抗がん剤、放射線治療といった、体への負担が大きい「総力戦」が必要になります。さらに転移があるステージ4(IV期)になると、5年生存率は10%台まで下がるという厳しいデータもあります。
「痛くないし、忙しいから来月でいいや」という数ヶ月の先延ばしが、この境界線を越える原因になりかねません。病名よりも「タイミング」が命なのです。
2. 見逃してはいけない「3つのサイン」
膀胱がんが発するSOSを、絶対に見逃さないでください。
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痛みのない血尿(無症候性血尿) 最大の特徴は「痛くない」こと。膀胱炎や結石は痛みを伴うことが多いですが、がんは初期ほど無痛です。また、「一度出たけど翌日は止まった」というケースが最も危険。原因が消えたわけではありません。
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頻尿・残尿感・違和感 「トイレが近い」「出し切った感じがしない」。これらは前立腺肥大や膀胱炎でも起こりますが、薬を飲んでも治らない、あるいは繰り返す場合は要注意です。
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健診での尿潜血 目に見える血尿がなくても、顕微鏡レベルで血が混じっているサインです。「毎年引っかかるから体質だろう」と放置するのは避けましょう。
3. 【セルフチェック】なりやすさの目安
特に以下の項目に当てはまる方は、症状が軽くても一度専門医への相談を検討してください。
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喫煙歴がある(過去に吸っていた場合も含む) ※実は、肺がんと同じかそれ以上にタバコとの関連が強いのが膀胱がんです。
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50歳以上の男性
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染料や化学物質を扱う仕事の経験がある
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一度でも肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)があった
4. 検査の「痛み」の真実。本当は怖くない?
「カメラを尿道に入れるのが怖い」という不安、よくわかります。しかし、現代の検査は皆さんが想像する「激痛」ではありません。
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ステップ1:尿検査&エコー 尿を採る、もしくはお腹に機械を当てるだけ。痛みはゼロです。
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ステップ2:膀胱内視鏡(ここが不安な方へ) 現在は、昔のような硬い管ではなく、「軟性鏡」という非常に細くて柔らかいカメラが主流です。 当院でも、麻酔ゼリー(潤滑剤)をしっかり使い、痛みを最小限に抑えています。感覚としては「ツーンとする違和感」に近いもので、数分で終わります。
怖がって先延ばしにするデメリットの方が、検査の違和感よりも遥かに大きいのです。
まとめ
今回のポイントを3つにまとめます。
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「痛みのない血尿」は放置厳禁。
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初期であるほど治療の選択肢が広く、膀胱も残せる。
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「検査が怖い」という理由での先延ばしが、最大の健康リスク。
もし今、少しでも尿に不安があるなら、迷わず泌尿器科を受診してください。早期発見さえできれば、守れる未来がたくさんあります。
「あの時、行っておけばよかった」と後悔してほしくありません。 怖がらなくて大丈夫です。私たちがついています。

