こんにちは!所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。
「血尿が出たけれど、痛くないからそのうち治るだろう」
――その油断が、膀胱がんの早期発見を遅らせてしまうことがあります。
今回は、膀胱がんの症状・原因・検査・治療・再発予防までをわかりやすく解説します。
膀胱がんの名前は耳にしたことがあっても、具体的な症状や検査・治療の内容まではご存じない方が多いのではないでしょうか。
膀胱がんも、ほかのがんと同じく早期発見・早期治療がとても大切です。この記事を通して、知っておいていただきたいポイントをまとめてお伝えします。
1. 膀胱がんとは(どこにできるがん?)
膀胱がんは、その名のとおり膀胱にできるがんです。膀胱は、腎臓でつくられた尿をためて、体の外に排出する役割をもつ臓器です。
膀胱の壁は、主に3つの層からできています。
| 層 | 位置 | 特徴 |
|---|---|---|
| 粘膜 | いちばん内側 | 尿に直接触れる層。膀胱がんの多くはここから発生する |
| 筋層(筋肉の層) | 中間 | 伸び縮みして尿をためる・出す働きをする |
| 漿膜(しょうまく) | いちばん外側 | 膀胱を包む膜 |
膀胱がんの中でもっとも多いのは尿路上皮がん(にょうろじょうひがん)で、これは膀胱のいちばん内側にある粘膜から発生するがんです。
2. 膀胱がんの症状 ― 痛みのない血尿に注意
膀胱がんでもっとも典型的な症状は、肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)、つまり「目で見てわかる血の混じった尿」です。
血尿は、膀胱炎や尿路結石(尿の通り道にできる石)でも起こります。ただし膀胱炎や尿路結石では、痛みや違和感などほかの症状を伴うことが多いのが特徴です。
一方、膀胱がんによる血尿は痛みや違和感を伴わないことが多いのがポイントです。「痛くないから大丈夫」と油断しがちですが、痛みのない血尿こそ、膀胱がんを疑うべき重要なサインなのです。
膀胱炎を繰り返す方も一度チェックを
膀胱がんは、膀胱炎や膀胱結石(膀胱の中に石ができる病気)と併発することがあります。そのため、膀胱炎を頻繁に繰り返す方は、一度、膀胱の中にがんがないかを確認しておくことをおすすめします。
進行すると排尿のトラブルも
がんが進行して膀胱の中で大きくなってくると、尿の違和感や、人によっては尿が出にくい排尿障害といった症状が出ることもあります。こうした症状がある場合も注意が必要です。
3. 膀胱がんになる人はどれくらい?(最新データ)
国立がん研究センターの全国がん登録(2020年)によると、日本で1年間に膀胱がんと診断された方は次のとおりです。
| 性別 | 罹患数(年間) |
|---|---|
| 男性 | 約17,000人 |
| 女性 | 約5,700人 |
このように、男性は女性の約3倍、膀胱がんにかかりやすいことがわかります。また、男女ともに60歳前後から発症が増え、特に男性では高齢になるほど増加する傾向があります。
4. 膀胱がんの原因・リスク因子
膀胱がんのリスクを高める主な要因は、次のとおりです。
① 喫煙(最大のリスク因子)
肺がんなどと同じく、喫煙は膀胱がんの非常に大きなリスクです。たばこを吸う方は、吸わない方に比べておよそ3〜4倍膀胱がんになりやすいと報告されています。禁煙は膀胱がんの予防にもつながります。
② 化学物質(職業性のばく露)
特定の化学物質を扱う工場で長く働いていた方や、染料・染め物を扱う仕事に従事していた方は、膀胱がんのリスクが高いとされています。
③ 慢性的な膀胱炎
慢性的な膀胱の炎症も、膀胱がんのリスクを高める可能性があると考えられています。
5. 膀胱がんの診断・検査の流れ
たとえば、典型的な症状である血尿でクリニックを受診された場合、次のような流れで調べていきます。
STEP 1:尿検査
まず必ず行うのが尿検査です。「血尿がある」と感じても、本当に尿の中に血液が混じっているかは別問題です。顕微鏡などで尿を観察し、赤血球(血液の成分)が実際に混じっているかを確認します。
STEP 2:画像検査(超音波・CT)
次に、超音波(エコー)検査やCT検査を行います。最初からCT検査を行う場合もあります。血尿の原因は膀胱がんだけでなく、尿路結石などの可能性もあるため、どの病気が原因なのかをしっかり鑑別していきます。
STEP 3:膀胱鏡検査
検査の結果、膀胱がんの可能性が高いと考えられる場合は、膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査を行います。これは、尿道の出口(男性はペニスの先、女性は尿道の出口)から細い内視鏡カメラを挿入し、膀胱の中を直接観察する検査です。膀胱鏡検査によって、高い精度で膀胱がんの有無を見極めることができます。
STEP 4:転移の確認
膀胱の中に腫瘍(できもの)があるとわかった場合は、肺・リンパ節・ほかの臓器などに転移していないかを画像検査で改めて確認し、その上で治療に進みます。
6. 膀胱がんの治療法
膀胱がんが見つかった場合、ほとんどのケースでまず内視鏡手術を行います。
内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術/TURBT)
お腹を切る手術ではなく、尿道の出口から内視鏡を入れ、ループ状の電気メスで膀胱の腫瘍を削り取る方法です。削り取った組織は、病理学を専門とする医師(病理医)が顕微鏡で詳しく調べます。
悪性度と深達度で治療方針が決まる
ひとくちに膀胱がんといっても、悪性度(おとなしいタイプ〜たちの悪いタイプ)や深達度(がんの深さ)はさまざまです。病理検査でこの2つを確認し、その結果に応じて治療方針が細かく分かれます。
| がんの状態 | 主な治療方針 |
|---|---|
| 悪性度が低く、浅いタイプ | 内視鏡手術で治療が完了する場合もある |
| 浅くても悪性度が高いタイプ | 追加の治療が必要になることがある |
| 深達度が深いタイプ(転移なし) | 膀胱そのものを摘出する手術が検討される |
| 転移がある/膀胱の外まで浸潤しているタイプ | 抗がん剤治療が選択肢になる |
もっとも、これはあくまで一般的な流れです。実際には、患者さんお一人おひとりの体の状態に加え、ご家族の状況やお仕事の事情といった社会的な背景も含めて、その方にとって最善の治療を相談しながら決めていきます。
7. 治療後のフォロー ― 再発しやすいがんだからこそ
膀胱がんで特に重要なのが、内視鏡手術のあとの定期的なフォローアップです。
膀胱がんは再発率が非常に高いがんで、内視鏡手術後の経過観察ではおおよそ2人に1人が再発するとされています。だからこそ、治療が終わったあとも油断せず、定期的に検査を続けることが欠かせません。
治療後のフォローでは、次のような検査を定期的に行います。
- 膀胱鏡検査(膀胱の内部を直接観察)
- 尿検査
- 尿細胞診(尿の中にがん細胞がいないかを調べる検査)
具体的には、手術後2年間は、再発がないことを確認できるまで、おおむね3か月に1回のペースで検査を行うことをおすすめしています。これにより、万が一再発した場合でも、早期発見・早期治療につなげることができます。
8. よくある質問(FAQ)
Q. 痛みのない血尿が出ました。様子を見ても大丈夫ですか?
A. 痛みを伴わない肉眼的血尿は、膀胱がんを疑う重要なサインです。1回だけで自然に止まった場合でも、がんが隠れていることがあります。自己判断で様子を見ず、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。
Q. 膀胱がんはどんな検査で見つかりますか?
A. 尿検査・超音波(エコー)検査・CT検査・膀胱鏡検査などを組み合わせて診断します。なかでも膀胱鏡検査は、尿道から細いカメラを挿入して膀胱の内部を直接観察する検査で、高い精度で膀胱がんの有無を判断できます。
Q. 膀胱がんの治療では必ずお腹を切りますか?
A. 多くの場合、お腹を切らずに、尿道から内視鏡を入れて腫瘍を削り取る「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」を行います。がんの深さや悪性度によっては、膀胱の摘出手術や抗がん剤治療が選択肢となることもあります。
Q. 膀胱がんは再発しやすいと聞きました。本当ですか?
A. はい。内視鏡手術後の経過観察では、おおよそ2人に1人が再発するとされ、再発率の高いがんです。そのため治療後も、定期的な膀胱鏡検査・尿検査・尿細胞診によるフォローアップが欠かせません。
Q. 喫煙は膀胱がんに関係しますか?
A. 強く関係します。喫煙者は非喫煙者と比べて約3〜4倍、膀胱がんになりやすいとされ、最大のリスク因子と考えられています。禁煙は膀胱がんの予防に有効です。
痛みのない血尿が気になる方へ
所沢いそのクリニックでは、泌尿器科専門医が血尿の原因をていねいに調べ、必要に応じて検査・治療をご案内します。所沢市・入間市・狭山市・東村山市・川越市エリアで、血尿や排尿のお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

