こんにちは。院長の磯野 誠です。
「最近、おしっこが出にくいけど、まだ少しは出ているから大丈夫」 「年のせいだから、もう少し様子を見よう」
もし今、あなたがそう思っているなら、一度その判断を止めて、私の話を聞いてください。
尿のトラブルの中には、様子を見てはいけない、すぐに病院を受診すべき状態があります。その代表例が「尿閉(にょうへい)」です。
今日は、現役泌尿器科専門医の立場から、あなたの体を守るための大切な判断基準をお話しします。
「尿閉」ってどんな状態?
文字通り、「尿」が「閉ざされる」状態です。 膀胱(ぼうこう)というダムには水が満タンに溜まっているのに、放流ゲートが開かず、外に出せない状態を指します。
これは単なる「出にくい感じ」ではなく、物理的に排泄システムが故障している状態です。
痛くないからこそ怖い。「慢性尿閉」の罠
尿閉には2つのパターンがあります。
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急性尿閉:突然一滴も出なくなり、激痛が走る。
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慢性尿閉:徐々に出なくなり、痛みがあまりない。
私が今日、特に皆さんに知ってほしいのは2つ目の「慢性尿閉」です。
長い時間をかけて進行するため、膀胱がその状態に慣れてしまい、痛みを感じにくくなります。ご本人は「おしっこが出た」と思っていても、実はコップの水が溢れるように「限界を超えてチョロチョロ漏れ出ているだけ」ということがよくあります。
膀胱の中に数百mL以上の尿が残ったまま生活している……これが一番怖い状態なのです。
なぜ尿閉になるの?意外な原因
特に男性に多い原因は「前立腺肥大症」です。 年齢とともに大きくなった前立腺が、尿の通り道をギュッと圧迫してしまいます。まるで、水の流れるホースを足で踏んづけているような状態です。
また、意外と知られていないのが「市販の風邪薬」の影響です。 風邪薬や花粉症の薬などの成分が、尿道の筋肉を締めてしまい、ギリギリ保たれていたバランスが崩れて急に出なくなることがあります。
「風邪薬を飲んだらおしっこが止まった」というのは、実は泌尿器科では決して珍しい話ではないのです。
これがあったら要注意!5つの危険サイン
尿閉はある日突然完成するわけではありません。体は必ずサインを出しています。以下の項目に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
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尿の勢いが弱い(放物線を描かず、足元に落ちる)
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出始めるまでに時間がかかる(トイレに立ってからタイムラグがある)
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お腹に力を入れないと出ない
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夜、何度もトイレに起きる(出し切れていないため、すぐ満タンになる)
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出し終わっても、残っている感じがする
これらが日常的に続いている場合、あなたの膀胱はSOSを出しています。
「まだ大丈夫」と放置するとどうなる?
少し怖い話になりますが、事実をお伝えします。放置すると、次の3段階で体へのダメージが進行します。
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膀胱が伸び切ってダメになる ゴム風船をパンパンの状態で放置すると、ゴムが伸び切ってベロベロになりますよね?膀胱も同じです。一度伸び切ると、手術で通り道を広げても、自力で出す力が戻らなくなるリスクがあります。
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感染症を起こす 溜まった尿の中で細菌が繁殖し、高熱が出たり、最悪の場合は命に関わる敗血症になったりすることがあります。
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腎臓が壊れる(腎不全) これが出口のない尿の行き着く先です。尿が腎臓へ逆流し、腎臓の機能を破壊してしまいます。一度壊れた腎機能は、元に戻らないこともあります。
「たかがおしっこ」と思っているうちに、気づけば透析が必要になる……そんな悲しいケースを防ぎたいのです。
泌尿器科は、恥ずかしい場所ではありません
「下の話をするのは恥ずかしい」「痛い検査をされるんじゃ……」 そう思って受診をためらうお気持ち、よく分かります。
ですが、私たち泌尿器科医は尿トラブルのプロフェッショナルです。決して恥ずかしいことではありません。
検査も皆さんが想像しているよりずっとシンプルです。
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お腹の上から超音波(エコー)を当てる(痛みはありません)
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トイレ型の機械でおしっこをする、残尿をはかる
- 尿検査をする
たったこれだけで、膀胱の状態や尿の勢いはかなり分かります。
最後に:あなたとご家族を守るために
もし、先ほどのチェックリストに一つでも当てはまるなら、あるいは「全く尿が出ない」という状態なら、迷わず泌尿器科を受診してください。
早期発見できれば、飲み薬や体への負担が少ない治療で改善することが多いです。
「スッキリおしっこが出せる」 これは、毎日を気持ちよく過ごすための基本です。
もしご家族で、トイレが長い方や回数が多い方がいらしたら、「一度、病院で診てもらったら?」と声をかけてあげてください。その一言が、大切なご家族の腎臓と、未来の健康を守るきっかけになります。
当院では、患者さんのお気持ちに寄り添い、痛みの少ない丁寧な診察を心がけています。「相談だけしてみようかな」という軽い気持ちで構いません。いつでも私たちを頼ってください。
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