こんにちは。所沢いそのクリニック院長の磯野誠です。
当院の看板には「内科・泌尿器科・女性泌尿器科」と大きく掲げています。実際には高血圧、糖尿病、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群といった「内科」の患者様も数多く来院されます。 時折、患者様からこんなご質問をいただくことがあります。
「先生は泌尿器科の専門医なのに、どうして内科もこんなに熱心に診ているんですか?」
もっともな疑問だと思います。大学病院などで癌の研究やロボット支援手術の指導医を務めてきた経歴を見れば、手術や専門治療だけに特化するのが一般的かもしれません。
しかし、私が「内科も診る泌尿器科医」というスタイルを貫いているのには、明確な2つの理由があります。 一つは私の「医師としてのルーツ」、もう一つは「身体の仕組みの真実」です。
今日は、少しだけ私の昔話と、意外と知られていない身体の話にお付き合いください。
原点としての「自衛隊医官」時代 〜何でも診るのが当たり前〜
私が医師としての基礎を築いた場所の一つに、「自衛隊」があります。私はかつて、陸上自衛隊医官として勤務していました。
自衛隊の医療現場、特に駐屯地の医務室や派遣先は、大学病院とは全く異なる世界です。そこには最新鋭の検査機器もなければ、すぐ隣に他の科の専門医がいるわけでもありません。 しかし、隊員たちは日々様々な不調を訴えてやってきます。怪我、発熱、腹痛、メンタルの不調……。「私は泌尿器科医だから、お腹の痛みはわかりません」なんて言葉は通用しない現場です。
目の前で苦しんでいる人がいれば、科に関係なく、まずは私が診察し、判断しなければならない。 そこで叩き込まれたのが、「総合診療(プライマリ・ケア)」の精神でした。
「木を見て森を見ず」では、人は救えません。 特定の臓器だけを見るのではなく、その人の生活背景や全身の状態をトータルで診る。そうすることで初めて、隠れていた病気のサインに気づくことができます。 この経験が、今の「まずは何でも相談できる医療の入り口でありたい」という私の診療スタンスの原点になっています。
泌尿器の病気は「全身の鏡」 〜夜間頻尿と無呼吸の意外な関係〜
もう一つの理由は、より医学的な事実に基づいています。 実は、「泌尿器の病気だと思っていたら、原因は内科の病気にあった」というケースが非常に多いのです。
わかりやすい例として、多くのシニア世代を悩ませる「夜間頻尿(夜、何度もトイレに起きる)」についてお話ししましょう。
「夜トイレに起きるのは、年のせいか、膀胱が弱ったせい」 そう考えて泌尿器科を受診される方がほとんどです。しかし、検査をしても前立腺や膀胱に大きな異常がない。それなのに、夜中に3回も4回も目が覚めてトイレに行ってしまう。 この場合、いくら「頻尿の薬(膀胱をリラックスさせる薬)」を飲んでも症状は改善しません。
なぜなら、真犯人は膀胱ではなく、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの内科疾患である可能性があるからです。
「喉が詰まって息が止まる病気と、おしっこに何の関係があるの?」 と驚かれるかもしれません。ここには、人間の身体の精巧なメカニズムが関係しています。
睡眠中に無呼吸状態になると、身体は必死に息を吸おうとして胸の中(胸腔)の圧力が下がります。すると、ポンプ作用で心臓に血液が過剰に戻ってきます。 心臓はこれを受けて、「おや? 血液が多すぎるぞ。身体に水分が余っているんだな」と勘違いを起こします。 そして、心臓から「ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)」というホルモンが分泌されます。これは「尿を出して水分を減らせ!」という命令を出すホルモンです。
その結果、本来なら寝ている間は作られないはずの尿が、夜中にどんどん作られてしまうのです。これを「夜間多尿」と言います。
このメカニズムを知っていれば、治療すべきは「膀胱」ではなく「無呼吸(内科)」であることがわかります。CPAP療法などで呼吸を改善すると、嘘のように夜間のトイレがなくなる方が大勢いらっしゃるのです。
「生活のための医療」を目指して
また、ED(勃起不全)などの男性機能の悩みも同様です。 これらは単なる局所の問題ではなく、糖尿病や高血圧によって血管が傷んでいることの「警告サイン」である場合が多々あります。 泌尿器科医として局所の治療をするだけでなく、内科医として血糖値や血圧をコントロールしなければ、患者さんの健康な未来は守れません。
身体はすべてつながっています。 泌尿器科の不調を治すために内科の知識が必要であり、逆に内科的な健康管理が泌尿器のトラブルを防ぐことにもつながります。
「泌尿器科専門医だから」と視野を狭めるのではなく、「専門医だからこそ、全身(内科)もしっかり診る」。 それが、所沢いそのクリニックの目指す医療です。
風邪や生活習慣病といった日常的な内科疾患から、専門的な泌尿器のお悩みまで。 「これは何科に行けばいいんだろう?」と迷ったときは、どうぞ遠慮なく当院にご相談ください。私が自衛隊時代から培ってきた「総合診療」の視点で、あなたの健康をトータルサポートいたします。
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